歯科治療Q&A

SNSより寄せられた歯科治療の
質問への回答をご紹介します。

一部編集しておりますが、できるかぎり原文のまま掲載しています。
また、専門用語含めて、質問された方が書かれた言葉を敢えてそのままにしております。

根尖病巣複数アリのボロボロな口内です・・・

2024.05.28

質問

セラミック

根管治療

質問

こんにちは。
ほぼ全部の歯治療済みで根尖病巣複数アリのボロボロな口内です。
現在矯正5年目で終わりが見えてきたところです。
先日器具の付いていない奥歯(銀歯で根尖病巣あり)を矯正歯科と提携している歯科でセラミックに変えたのですが、その際再根治していませんでした。そして数日前ペルってしまいました。

そこで疑問に思ったのですが、被せ物を変える際レントゲンを撮らない、根尖病巣ありで再根治せず被せ物をするというのは割と普通なのでしょうか? また、保険でラバーダムやマイクロスコープ使って根治してくれる歯科を見つけたのですが、やはりこういった処置をしてもらった方が歯は長く持ちやすいでしょうか?矯正と歯科が提携している為歯科を変えるのは難しそうなのですが、遅ればせながら自歯の大切さに気づいたので今ある自分の歯を無駄にしたくないです。
提携以外の歯科に行かれると何かあった際や、進捗?等色々先生の手を煩わせてしまうのは承知ですが、それでもこれからの歯の為にラバーダム等使って処置してくれる歯科に行くのが良いのか、迷っています…。 先生のご意見を聞かせていただきたいです。

回答

回答

ご質問ありがとうございます。 矯正、お疲れ様です。

あくまでイチ歯科医師の回答になりますため、歯科医師全員が同じ事を言うとは限らないことをご了承ください。

以下回答になります。
まず「根尖病巣有り」のことを僕らの世界では一般的にはペルってると言ったりするので、それが分かっていたのに再根治せずペルった、という表現は間違っているかなと。 初めから病気がそこにあることを分かっていたけれど放置したら、後からやっぱり痛みなどの症状が出た。 という表現が正しいです。
さて、ここからですが

1、 被せ物をする際にX線を取らないのは普通か?
→先生ごとのお考えや、患者さんの状況もあるかと思いますが、
個人的には普通ではないです。 個人的にはあり得ない、といっても過言ではありません。
どんな治療をするにしてもX線はほぼ必須の検査です。
だから、私はX線自体を拒否する人は治療もお断りすることが多いです。

2、 根尖病巣があるのに根治せず被せ物をするのは普通か?
→説明と同意によってはあり得る。
何も説明なく被せるとしたらあり得ない。 が個人的回答です。

これは何を申し上げているか説明するために前置きを長く取ります。

まず、 根尖病巣が確認できる=殆どの場合、根管内細菌を原因とする病気がある ということにはなりますが、
だからといって 「症状の有無とは関係がない」のが大きなポイントです。 また、 根尖病巣がX線等で確認できないからと言って、
「病気になっていないとは限らない」のもポイントです。

この根尖病巣、つまりペルってると呼ばれる状況はいつ痛みを出すか出さないかすら曖昧で、病気の大きさにも比例するわけでもなく、人によっては進行が早い人や遅い人もいます。
症状が出ても、劇的なものでなければ何か微妙に痛いかも?くらいの状況が1週間くらいある程度で、自覚症状が消えてしまうことも多く、患者さんの自己判断で放置されやすい疾患です(病気自体は消えません)。

そして、これを治すための再根管治療ですが、初めての神経処置(抜髄)と比較して格段に難易度が高く、歯の残存量もどんどん少なくなるため、非常に繊細な技術が問われます。

歯根破折という不透明かつ起きた場合ほぼ抜歯という予後を含めて、治療の技術やクオリティなどあらゆる要素が非常に高いレベルで要求されます。

正直、然るべき技術を以て保険内でそれを対応出来るかとなってくると、今の保険診療での根管治療のデータを見る限り、完全に賭けに近い。と言わざるを得ないでしょう。しかも旗色の悪い賭けです。
ましてや大臼歯等になったらその成功確率は更に下がります。
(これはラバーダムやマイクロスコープを使っても一緒です。 使わないより成功率的には多少マシになるかもしれませんが、結局どれだけその分野や道具に精通しているかの問題です)

だから、例えば当院の場合ならほぼ自費です。
時間かけて丁寧にその分野や道具に精通してる人間がやらないとそもそも難しい治療です。 時間をかけてってのがポイントです。
歯科において時間をかける、時間をかけられるというのは間違いなくお金をもらわないと採算が合わないのが日本の現状です。
それでも確実に治るわけではない、少しでも確率を上げることへ投資をするか否かという話です。

そして、そんなに難しくて時間をかけたい治療なのに保険の根管治療は異常に報酬が安いです。
だから、そもそもまともに向き合って治療されないケースが山程あります。 言い方を悪くするなら、 保険根治は赤字だからちゃっちゃと終わらせるか、そもそもやらないで被せ物とかで利益を出したいのですよ。
この概念の行き着く先は、 「症状ないなら病気あるけど根治無しで被せだけやりましょ」 って言う説明をしだす人間を生み出します。 (もう一つ理由がありますが、それは最後に)

さて、前置きは終わりです。 では何故、説明と同意によっては根治せず被せがあり得るのか?
→この説明を全てしたとして、患者さん側の予算都合、もしくはその他の理由で拒否をした場合です。 これ以外個人的にはありません。

僕は根尖病巣が見えて無くても、高い被せ物をするなら予防的に根管治療をやり直すべきだと考える人間です。根が原因でせっかくの被せ物を壊すの嫌ですから。 そして拒否された場合、リスクを承知と同意の上で被せます。
被せ物を保険にするか自費にするかはもちろん患者さん次第です。

ちなみにここまでの説明をしても、ぼったくり医院のレッテルを貼られる事もあります。
実際当院の口コミにも似たような話で低評価が書かれております。

理由は、 「症状ないなら被せだけで大丈夫だよー」と、何の根拠もないセリフで被せたりする医院が山程あるからです。
今回のケースもそれに該当しますよね。
ましてや、根尖病巣が確認できていたのに説明すら無いは明らかにまずいと個人的には思います。

その場合、残念ながら症状が出るまでうちはヤブ医者なんですよ。
不必要な治療を促され、金を取られそうになったと。

こういう人間の存在もまた1つ、 「根管治療をスルーして被せる」ことの要因にもなってます。

患者さんからすれば、根治は保険で被せ物は自費が良かったかもしれません。 でも、結局その組み合わせで治療を行った結果、日本中にペルが多発し、ほぼ2本に1本は被せ物を壊す事になっている現実はどう転んでも事実です。 それだけ、蔑ろに扱われる治療なのですよ。
日本の保険診療と根管治療の相性は最悪です。
報酬が安いという事は、それだけの代償があります。 あくまで確率の話ですが。
言い換えれば保険でも2分の1で成功するので、困ったことが無い方にとってはさぞ儲け主義の歯科医師に見えるのだと思います。
困ったことがある方は毎日必死に根管治療のこと調べて探すのですが、人はそうならないと見向きもしませんからね。
長文、失礼しました。