【症例】大きな虫歯に対して根管治療とジルコニアクラウンで治療した症例
治療内容
右上第一小臼歯、第二小臼歯の根管治療及びフルジルコニアクラウン補綴治療期間
2ヶ月治療回数
6回費用
275,000円 × 2本 = 550,000円(税込)治療前の主訴・状態
今回の患者様は、30代女性の方で、今までかかりつけ歯科医で検診を行っていて虫歯はないと言われていましたが、矯正をした際に「虫歯があるかもしれない」と言われ、確認希望のためにご来院されました。
自覚症状はなく、痛みを感じたことはないそうです。
左のレントゲンには神経にまで達する大きな虫歯が見られます。
右の口腔内カメラの写真からは一見なにもないように見えますが、少し歯の色が全体的に黒くなっています。
治療詳細
【1回目】 この日の目標は虫歯を取り切ることです。
①まずは虫歯の全貌が確認できるように最表層にあるエナメル質を削っていきます。
②ある程度虫歯を取り除いたら「う蝕検知液」と呼ばれる、虫歯だけを特異的に染め出す液体を用いて、虫歯を染めていきます。
③染めては虫歯を削り、染まらなくなるまで繰り返します。
④今回は事前にわかっていましたが神経が露出してきます。また歯茎から出血しているので止血しています。
⑤その日は痛みを防止する為、神経を一部取り除き、仮蓋を行います。
【2回目】根管治療が本格的にスタートします。
①仮蓋の除去後、根管治療に進むために隔壁の作成を行います。隔壁とはこのあと「ラバーダム防湿」を行うための準備であり、薬液や細菌の侵入を防ぐ「壁」の役割を果たします。
②ラバーダムを装着して本格的な根管治療のスタートです。
③根管治療のステップ1である、根管の先端に器具が届くようにするための「上部拡大」を行っていきます。
当院ではこの操作を、少しでも歯を温存するために超音波器具にて行います。
④根管の先端のアプローチに入っていきます。まずは根管の長さを計測していき
ます。
⑤長さの計測が終わったら、薬液がしっかり灌流できるように根管内を少しずつ拡大していきます。
当院ではニッケルチタンロータリーファイルを用います。効率よく、なおかつ歯の温存にも貢献する道具です。
⑥根管内を必要なサイズまで拡大したら薬液にて根管内を洗浄します。
⑦次回まで根管内に入れておく別の薬剤を残置、蓋をします。
【3回目】
①前回の蓋を除去し、別の薬剤を洗い流したらいよいよ最終的な薬を根管に中に入れていきます。
この操作のことを「根管充填」といいます。
②まず根管を薬剤でよく洗ったら乾燥させていきます。水分や空気を吸引する「サ
クション」と浸透圧で水分を吸うペーパーポイントを用います。
③ いよいよ根管充填を行っていきます。
根管充填は2種類の材料を用います。ゴムの木から採取された樹脂を加工した「ガッタパーチャ」と「シーラー」です。シーラーには様々な種類があり、当院では「バイオセラミックシーラー」と呼ばれる現在最も臨床成績の良いものを用います。とても良い材料ですが高価なのが玉に瑕です。
a. まずシーラーを根管内に入れていき、その後ガッタパーチャを挿入していきます。
b. 「ヒートプラガー」と呼ばれる器具で余分なガッタパーチャを切断します。
その後、CWCT(コンティニュアスウェーブコンデンセーションテクニック)を用
いて高温で軟化したガッタパーチャを充填していきます。
④あらかじめ決めた位置まで根管充填が終われば、次は「支台築造」へと移行します。
根管へアクセスするために開けた穴を埋め、歯の補強を行う処置になります。
根管治療後のレントゲン写真になります。
【4回目】
この日は”仮歯”を装着していきます。次回まではこの仮歯を患者様に使用していただき、噛んだときの違和感、発音、審美要件、唇や頬の誤咬の有無、などを確認していただきます。
【5回目】
いよいよ最終的なジルコニアクラウンの型取りになります。
当院では”歯肉圧排”と呼ばれる、歯と歯茎の境界を明瞭にする処置を行います。この処置によりジルコニアクラウンの適合が飛躍的に向上します。
【6回目】
ジルコニアクラウンを装着します。
治療後の様子
治療後の写真になります。
患者様には見た目に関しても大変ご満足いただけました。
主な副作用・リスク
・治療の結果や症状の改善を100%保証するものではありません。
・根管治療特有の偶発症が起こる可能性があります。
・根管治療終了後には術後性疼痛がある場合があります。
・セラミックやジルコニアは、使用状況によっては破折の可能性があります。
・術後、症状が改善しない場合は、抜歯などの外科処置を行うことがあります。
<自由診療では、より丁寧な時間をかけた治療が可能になります>
自由診療と保険診療の大きな違いは「時間」だと思っています。
今回の症例は自由診療でしたが、根管治療が120分☓3回、仮歯から装着までは60−90分×3回と、各治療多くのお時間をもらっています。
一方、保険診療というと予約時間は30分前後が多いのではないでしょうか。
保険診療は診療報酬があらかじめ決まっています(月をまたぐと加算されるものや施設の設備によって変動することがあるので金額に幅はありますが、、、)ので、その報酬から逆算した時間しかとれないのが現状です。
時間が限られれば何かを省略したり、妥協しなければなりません。
自由診療であれば本来必要な手順を踏むための時間をいただくことができるので、私達も100%の力を発揮できます。
患者様にとっては口を開けている時間も長いですし、顎がつかれてしまうなど大変な一面がありますが、歯科医師と患者様の努力の先に長期的に良好な治療を行うことができると思っています。
この記事が少しでも患者様のためになることを願っています。
三好歯科 自由が丘 歯科医師 望月
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