【症例】根管治療後にジルコニアクラウンとE-MAX(セラミック)インレーを装着
治療内容
右下第二小臼歯の根管治療とオールジルコニアクラウン装着右下第一大臼歯へのE-MAX(セラミック)インレー装着
期間
2ヶ月弱治療回数
合計6回(治療は5回)カウンセリング1回
根管治療2回
仮歯作成1回
型取り1回
合着1回
費用
209,000円(税込)※ジルコニアクラウン132,000円+セラミックインレー77,000円 ※いずれも税込
その他、根管治療などは保険診療
治療前の状態・主訴
【0日目(カウンセリング)】
患者様は「他院で虫歯の治療をしたけれど、痛みが取れないので治療の続きを行ってほしい。歯の神経はできれば取りたくない」という主訴で来られました。
ところが、レントゲン写真を撮影して口腔内を確認したところ、既に歯の神経が取られていました。患者様ご自身は、歯の神経が既に取られていたことを知らなかったのです。
皆様は驚かれるかもしれませんが、実は当院には、このような患者様がかなりの人数来られます。一部の歯科医院では、歯科医師が患者様と十分にコミュニケーションを取らないまま治療を始めてしまうケースもあります。また、「治療内容を聞ける時間がない」「どんな処置が施されたのか知らないまま治療が終わってしまう」とおっしゃる患者様も多いです。
実際のところ歯科医院側の説明不足なのか、患者様側の理解不足なのか、あるいは両方なのか、真相は不明です。ただ、患者様自身が治療内容を理解できていないまま治療が進んでいた、というのは大きな問題点ですし、結論として、双方の明らかなコミュニケーション不足が原因だと考えられます。歯科治療においては、お互いの理解が非常に大切です。
今回の患者様は、現在の歯の状態や治療方針、治療コスト、治療期間などをしっかり相談させていただいた結果、当院ではイレギュラーではありますが、保険診療内で根管治療を行いました。
通常、このようなケースでは、予後なども含めて「専門の歯科医師による自費診療の根管治療」を推奨しております。根管治療は、専門医が手を尽くしても難しいことがたくさんある分野です。基本的なこと(プロトコール)を守れば、専門医でなくても治療に差はないか?と聞かれれば、答えは「否」です。
当院では、専門の歯科医師による根管治療を推奨していますし、今回のようなイレギュラーの保険診療は、場合によってはお断りすることもありますのでご了承ください。
なお、詰め物はオールジルコニアクラウンという素材(自由診療)を使って修復予定となり、治療を始めました。
治療詳細
【1日目】
レントゲン写真(初回治療時)
初診時の口腔内画像
古い詰め物(レジン)の一部を取り除いたところ、詰め物の下に虫歯が見えています。
前院では、この虫歯が原因で、歯の神経を取ったと思われます。本来であれば、この虫歯を完全に取り除いてから根管治療へ移行しなければなりませんが、虫歯が残ったまま治療を進めていたようです。
歯科医師によって意見が異なるかもしれませんが、根管治療の大原則は「根管内の細菌の数を減らす」です。根管の近くに、細菌の塊である虫歯を置いておく必要性は一切ないため、治療のコンセプトに沿っていないと言えます。
そこで、詰め物を取り切り、むし歯を染める液体「う蝕検知液」にて染色しました。青く染まっているところが虫歯です。
虫歯をすべて取り除きました。ここで仮封剤を取ってしまうと、根管内の虫歯の感染をさらに進めてしまうため、ラバーダム装着後に除去します。
ラバーダムとは?
ゴム製のシートで、主に根管治療の際に患部以外を覆うものです。細菌を含んだ唾液が患部に流入して細菌感染することを防ぐ目的で使います。
詳しくは下記をご覧ください。
ラバーダムはメリットが多いのに日本の歯医者で使用率が低いのはなぜか|ブログ|三好歯科 自由が丘
レジン樹脂を用いて、なくなってしまった歯質を補強しました。
これには、今後、根管治療を行うに当たり、次の2つの目的もあります。
1.唾液の侵入を防ぐ
2.強力な薬液が口腔内へ漏洩するのを防ぐ
ここからラバーダムを装着し、仮封剤を除去。薬剤を使用して根管内をきれいにしてから、別の薬を残置して、再度、仮詰剤にて蓋をしました。
【2日目】
治療部位の経過を確認後、再度ラバーダムを装着し、根管充填、支台築造と呼ばれる処置に移行しました。
根管充填とは?
根管内の歯の神経があった空間を埋める、根管への虫歯の再感染を防ぐ、という役割があります。
支台築造とは?
虫歯によってなくなった歯質と、根管治療のために削った歯質を補うための処置です。
レントゲン写真(根管治療後)
根管充填後の写真です。歯の根の先まで、充填剤がしっかり入っていることが確認できます。
【3日目】
仮歯を入れていきます。仮歯の目的は、主に次の3つです。
1.最終的な被せ物の形を模しているので、口腔内で正常に機能するか確認する
(頬や唇を噛まないか、反対の歯と干渉しないかなど)
2.初診時に見られた「噛むと痛い」という症状が消失しているか確認する
3.歯茎の状態のコントロール
【4日目】
いよいよ、最終的な被せ物「オールジルコニアクラウン」と、1本奥の歯に入れる「セラミックインレー」を同時に制作するための、印象採得(型取り)を行っていきます。
下記は、印象採得後、その型に石膏を継いだ石膏模型です。精度を高めるために複数回、型取りを行いましたが、今回はその中の1つをお見せします。
右下5番:オールジルコニアクラウン
右下6番:セラミックインレー(こちらも虫歯になっていたため、同時に型を取りました)
オールジルコニアとは「人工ダイヤモンド」とも言われる白い素材で、丈夫で割れるリスクが低く、変色や着色もしにくい、審美的に優れた素材です。クラウンは被せ物という意味です。
セラミックは陶材でできています。オールジルコニアと比べて強度はやや低いですが、天然歯に近い、自然で透明感のある色調を再現できます。インレーは詰め物という意味です。
歯科材料の素材について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
歯の被せ物の素材(マテリアル)とメリット・デメリット|ブログ|三好歯科 自由が丘
三好歯科 自由が丘の専属の歯科技工士さんと協力してできた制作物が、こちらです。
【5日目】
治療の最終日です。
仮歯を外し、歯のまわりの汚れを除去後、出来上がってきた制作物を歯に合着していきます。正確な型取りと、優秀な歯科技工士さんとの連携により、調整等は不要で色調も特に問題なく合着できました。
仮歯を外した直後
合着時
治療後の様子
検診にて経過を確認したところ、患者様は「まったく問題なく使用できている」とのことで、とても喜ばれていました。
主な副作用・リスク
・治療の結果や症状の改善を100%保証するものではありません。
・根管治療特有の偶発症が起こる可能性があります。
・根管治療終了後には術後性疼痛がある場合があります。
・セラミックやジルコニアは、使用状況によっては破折の可能性があります。
・術後、症状が改善しない場合は、抜歯などの外科処置を行うことがあります。
今回のケースには、大きな問題や、患者様に勘違いしてほしくない点がいくつかあります。治療の見解については、次回のブログで詳しく解説しますので、ぜひご覧ください。
歯のことでお悩みや疑問がございましたら、三好歯科 自由が丘へお気軽にご連絡ください。
下記ページも併せてご覧ください。
三好歯科 自由が丘|診療メニュー|根管治療
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