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【症例】歯質の少ない歯に対する再根管治療とMTAセメントによる根管充填

【症例】歯質の少ない歯に対する再根管治療とMTAセメントによる根管充填

治療内容
歯質の少ない歯に対して、患者様のご希望により出来るだけ負担の少ない精密な根管治療を施すことで、歯の保存を試みた症例
期間
1ヶ月
治療回数
3回
費用
再根管治療 100,000円(税別) ※コア(歯の土台)、被せものは含んでおりません

治療前の状態・主訴

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疲れたときや体調が悪いときに、左下1番奥の歯が疼いたり咬むと痛みを感じたりする症状が、1年以上前から断続的に出ていました。

しかし、そこまで強い症状でもなく数日で完全に痛みがなくなっていたので放置していましたが、ここ1ヶ月ほどは痛みの頻度が多く、痛み自体も前より強く症状も消えないため、当院をマイクロエンド(精密根管治療)相談にて受診されました。

治療詳細

前回の根管治療で入れた大きな金属のネジを、出来るだけ歯質を削らないようにしながら、専用の超音波器具などを用いて除去しました。

 

根管内はかなり感染を起こしていました。歯質を出来るだけ削らずに感染物を除去し、洗浄と消毒を繰り返していきます。

 

歯質が少なく、何度か根管治療を行っていたため根管内の形がいびつになっていました。ですので、根管の封鎖性を高め、細菌の再感染のリスクを下げるためにMTAセメントで根管充填を行いました。

治療後の様子

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2回目の処置の段階で痛みなどの症状が完全に消失したため、3回目にMTAセメントにより根管充填を行いました。問題がなければ4回目に土台をたてて仮歯を装着し、経過を見て最終的な被せもの(補綴)へ移行します。

主な副作用・リスク

・MTAセメント、精密根管治療は全て自費治療となります。
・術前の状態によりますが、予後を完全に保障するものではありません。
 治療はあくまでリスクの高低を左右するものです。
・術後の経過によっては外科治療もしくは抜歯が必要になることもあります。

<奥歯の再根管治療が必要になる原因とは?>

今回の症例は典型的で、『後ろにあった親知らず(恐らく半分埋まって横向き)との間に大きな虫歯ができて、親知らずは抜歯、手前の歯は神経の処置を行ったが感染を起こして症状が出てきた』という流れを踏んでいることが、見た瞬間にわかりました。

親知らずが無ければ、このように7番目の歯の後ろ側が大きく虫歯になるケースはほとんどありません。歯磨きが上手くできておらず虫歯になる方は、6番目の歯が先に虫歯になるケースが多いです。

そして7番目の歯の後ろが虫歯になると非常に見えづらく治療がしづらいため、このようなおかしな形の不適合な被せものが入ることが多いです。

三好歯科 自由が丘 再根管治療症例0619解説画像1

このX線画像を見ると一般の方でも矢印部分の形がおかしいことは気づくと思いますが、鏡で口の中を見ただけではまずわかりません。

このような不適合な被せものは汚れの付着を助長し、細菌の温床になります。そして、感染が進むと症状が出てきますが、基本的に神経が無い歯のため、感染がかなり進まないと症状が現れないのが怖いところです。

また、今回のケースでもう1つ問題視されたのが、歯質が既にかなり少ないことと根管内に土台として入れられていた長いネジです。

三好歯科 自由が丘 再根管治療症例0619解説画像2

土台(コア)というのは、簡単に言うならば被せものを維持するために必要な、芯に当たる部分です。何もないところへ被せものだけ乗せても、被せものは簡単に取れてしまいます。

しかし、再治療が必要になったときに、このように異常に長い土台(ネジ)は非常に厄介です。金属のネジをとるために歯の根の内部を必要以上に削れば、ただでさえ少ない歯質を更に少なくし、歯根破折のリスクをもっと上げてしまいます。この土台のとり方も、歯科医師ごとに違いがあります。

例として、
・歯を少し削り、ネジを掴めるようにしてペンチのようなもので引き抜く
・金属を全て削ってしまう

などがありますが、どちらもそれなりに歯にダメージを与えてしまいます。

専用の超音波器具とチップを用いれば、ほとんど歯を削らずにネジを除去することが可能です。
※先ほどの「治療詳細」1つ目の動画『再根管治療 超音波器具を用いた金属の除去』をご参照ください。
これにより、出来る限り歯にダメージを与えず、歯の根に治療を施すことが可能です。

そして今回の症例では、根管内に過去に何度か治療が行われており、不必要な歯の切削により、いびつな形をしていました。そのため、少しでも根管の封鎖性を高め、持続的な殺菌効果を期待するためにMTAセメント(硬化後膨張、持続的殺菌の効果)にて根管充填を行いました。

<再治療にならないために必要なこと>

前提として一番大切な事は、『再治療にならないようにすること』です。
そのためには、前回のブログにも書きましたが
『最初の治療、もしくは出来るだけ早い段階でクオリティの高い包括的な診療を受ける』
これが1番です。

前回のブログ「根管治療は『できるだけ早く、精密に』」

初めの根管治療で大事なのは、この3つです。
・歯の根の治療
・被せものの治療(咬み合わせの確認)
・歯周病の検査や歯磨きの状態を確認して徹底的な指導をする

治療も大切ですが、そもそも最初に治療することになってしまった原因は何だったのか?
それを改善していなければ、いくら治療を行っても、また治療を繰り返してしまうリスクは高いままです。そして、治療の度に歯は確実に抜歯へと近づいていきます。原因を見つけて指導し、患者様に理解していただいて初めて、良い治療・医療が成り立つものです。

三好歯科 自由が丘では一つ一つクオリティの高い治療をすることは当然として、原因を根本から改善し、患者様への十分な説明と、患者様のご協力のもとで良い医療を提供することを一番大切にしています。何か気になることがあれば、いつでも三好歯科 自由が丘へご相談ください。