「根管治療は専門医でなくてもいい?」「虫歯は必ず痛む?」症例から伝えたいこと
先日、ブログで「【症例】根管治療後にジルコニアクラウンとE=MAX(セラミック)インレーを装着」という症例をご紹介しました。
患者さんは、「他院で虫歯の治療をしたけれど、痛みが取れない」と来院されました。しかし確認したところ、歯の神経はすでに取られており、虫歯が残ったまま詰め物を入れられていました。神経が取られていることを、患者さんは知らなかったのです。
結果、当院では、歯の状態や治療方針、コスト、治療期間などを考慮して、イレギュラーではありますが保険診療内で根管治療を行い、オールジルコニアクラウン(自由診療)を使った詰め物で修復しました。
今回のケースには、大きな問題点と、患者さんに勘違いしてほしくないことが、2つずつあります。
【問題1】
患者さんが、自分自身の歯にどのような治療が行われているか理解していないまま、治療が進んでいた
すでに他の歯科医院で、歯の神経をとる治療を受けているのに「歯の神経を取りたくない」と来院される方が、当院には少なくありません。
ご自身がどのような治療を受けているのか分かっておられないケースは、歯の神経の話に関わらず、歯周病や矯正治療など他の歯科治療においても顕著です。歯科医院側の説明不足なのか、患者さん側の理解不足なのか、あるいは両方なのかは不明ですが、結論として、双方の明らかなコミュニケーション不足であると考えられます。
当院では、患者さんがその治療に関して理解していない、もしくは希望されない限りは、保険診療・自費診療に関わらず、一切の介入をいたしません。それほど、歯科治療においてはお互いの理解が重要だと考えているからです。これは、当院が最も大切にしていることです。
●参考●
患者さんの疑問・質問集1_歯科医院・歯科医師〜選び方編〜|ブログ|三好歯科 自由が丘
【問題2】
大きな虫歯が一部残ったまま根管治療を行っていた
これについては、歯科医師ごとに意見が若干異なる可能性もありますが、「虫歯が残っている状況でも根管治療を進めます」という専門医を、少なくとも私は知りません。
理由は簡単です。
そもそも、根管治療における目標・大原則は「根管内の細菌の数を減らすこと」です。それなのに、根管のすぐ近くに“細菌の塊”である虫歯をそのまま置いておく理由は、一切ないからです。要するに、治療のコンセプトに沿っていないと言えます。
今回の症例では、当院におけるイレギュラーな対応「保険診療での根管治療」だったため、専門の歯科医師が対応したわけではございませんが、当然ながら、治療を承る以上は、基本的なこと(プロトコール)をすべて守った上で治療をしています。
【勘違いしてほしくないこと1】
専門医でなくても基本的なことプロトコールを守れば根管治療の結果に差はない?
答えは、明白に「否」です。
当然、基本的なことを守らないよりは守る方が良いですが、歯科はそれだけで差を埋められるような甘い世界ではありません。特に根管治療に関しては、その最たるものの一つだと思います。専門医が手を尽くしても難しいことがたくさんある、そんな分野です。
繰り返しになりますが、当院では基本的に、専門の歯科医師による根管治療を推奨しております。理由は2つです。
●1回目の根管治療が、成功率が一番高く残存歯質量も多いため、後日の破折リスクも低いため。
●1回目の治療で結果的に上手くいかなかった場合、後から専門医による治療に急いで切り替えても、かなりビハインドを背負った状態となってしまうため。
もちろん、根管治療後に装着する詰め物・被せ物のクオリティなどにも影響は受けますが、最初の段階から専門の歯科医師が治療することで、「治療成功の確率」を高めることができます。これは、非常に重要です。
では、専門なら誰でも良いのか?
これはまた別の機会に、コラムとして書かせていただこうと考えていますが、先に3つの回答だけ述べておきます。
・専門医なら誰でも良い、というのは間違っている
・歯科の分野には「専門医ならではのデメリット」も存在する
・根管治療という分野に関しては、臨床の現場(実際の治療現場)での経験が豊富な専門の歯科医師が行うのが、私の経験上ベストである
保険診療はたびたび、その診療報酬の安さから、さまざまな問題を招きます。根管治療においては、特に時間をかけてじっくりやらないといけない治療なのに、残念ながら日本では、報酬額の計算上“もっとも時間をかけられない治療”という位置付けになっています。
根管治療の質の重要性は、根管治療で本当に困った経験がある患者さんでないと、なかなか実感しづらいかもしれません。
●参考●
根管治療は『できるだけ早く、精密に』|ブログ|三好歯科 自由が丘
【勘違いしてほしくないこと2】
虫歯が残っていると必ず痛みがある?
答えは「いいえ」です。
今回の患者さんの症例では、先述した通り、基本的なこと(プロトコール)が守られておらず、虫歯が大きく残ったまま根管治療が進んでいました。
また、患者さんいわく、当院に来た時点では痛みが引かずに継続していたとのこと。患者さんとしては「虫歯が残っていたから痛みがあった」と解釈しそうですが、これは無関係の可能性が高いです。
詳細は省きますが、プロトコールが守られていないことは、実はまったく珍しいことではありません。
過去のコラムでも何度か触れてきましたが、ラバーダム防湿の有無などがその最たる例です(道具は適切な環境を用意するためのものにすぎず、その後治療する術者の腕が最も重要です)。ラバーダムをしていなくても、術者が未熟でも、「たまたま治療が上手くいってしまうケース」は存在します。
●参考●
ラバーダムはメリットが多いのに日本の歯医者で使用率が低いのはなぜか|ブログ|三好歯科 自由が丘
例えば、歯に激痛が出た段階で歯科医院へ行ったとします。そこで必要に応じて歯の神経の治療さえすれば、ラバーダム防湿をしてもしなくても、術者が未熟でも、ほぼどんなケースであっても、ひとまず痛みは落ち着いてしまいます。
ちなみに、虫歯が原因で歯に痛みを感じることは、実はそんなに多くありません。上記の例のように自覚症状が出た段階では、残念ながら“相当大きな虫歯”になっています。しかし小さな虫歯は自覚症状がほとんどなく、患者さん自身が気付くのはほぼ不可能と言えます。ですから、定期メンテナンス等の健診が重要なのです。
このような理由から、もし「歯に痛みが出る=治療でプロトコールが守られていない」と言うならば、「世の歯医者はどうなっているんだ!」と、日本中が大騒ぎになるでしょう。
患者さんが納得できる、丁寧な治療説明・コミュニケーションを重視
いかがでしたでしょうか?
少し難しい話や、あまり面白くない話もあったかと思います。しかし、今の世の中は、良くも悪くも「真実を知りたい、きちんと説明がほしい」と希望される患者さんが、非常に多いです。
当院では初めに、治療についての説明にしっかり時間をかけ、患者さんと十分にコミュニケーションを取ることを重視しております。裏を返せば、「困ったときだけ1回の治療でパッと終えたい」「忙しくて歯科治療の時間を確保できない」という患者さんは、当院とは相性が良くないと言えます。
今回は話ができませんでしたが、当院は、被せ物や詰め物のクオリティも、日本屈指のテクニシャン(歯科技工士:DDLABO 北薗)と組み、通常よりも時間をかけながら、型取り~セットまで責任を持って治療しています。
歯のことで何かお悩みや疑問がありましたら、お気軽に自由が丘の歯医者 三好歯科 自由が丘へご連絡ください。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
下記ページも併せてご覧ください。
三好歯科 自由が丘|症例|根管治療後にジルコニアクラウンとE=MAX(セラミック)インレーを装着
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