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「虫歯?虫歯ではない?」歯科医院によって言うことが違うのは何故か

「虫歯?虫歯ではない?」歯科医院によって言うことが違うのは何故か

こんにちは、「三好歯科 自由が丘」院長の三好健太郎です。

今回は、いつもとは少し違う観点からのお話です。
「歯科医院や歯科医師が変わったら前と違うことを言われた」
という、歯科医院と患者様のトラブルについてです。私の周りでもよく聞きます。

やや長いので、時間がない方は最後の『まとめ〜歯の健康維持に大切なこと〜』だけでも読んで頂けたらと思います。

削る必要がある虫歯と削る必要がない虫歯

 

「前と違うことを言われた」というのは、歯科では非常によくある話です。
いわゆる『歯を削るか削らないか』『抜歯するか保存するか』『治療するかしないか』は、歯科医院の方針や歯科医師ごとに違うためです。

・健診に通っていたのに、ある時「大きな虫歯がある」といきなり言われた
・他院で3ヶ月に一回健診に通っていたのに、別の歯科医院で「虫歯が複数本ある」と言われた
・他院では「抜く」と言われた歯を「残して治療できる」と言われた

このようなケースはよくあります。

お口の中を鏡で見たときに歯に黒いものが見えたり、冷たいものがしみたりすると、どうしても「虫歯かな?」と不安になってしまうかと思います。

当院はじめ多くの歯科医院でも「これは虫歯ですか?」という質問をよく受けます。各歯科医師の判断でお答えするのですが、判断の前提として、削る必要がある虫歯と削る必要がない虫歯があるのです。

削る必要のある虫歯は『う蝕治療ガイドライン』(日本歯科保存学会)である程度定義されております。例えば、

・歯に穴が空いている
・その穴に食べ物やフロスなどの糸がひっかかる
・冷たいものが、う蝕が原因でしみる
・X写真診断をすると歯の中にう蝕が広がっている
・う蝕のリスクが高い
 (全身疾患がある、高齢、生活習慣が乱れている、歯磨きがうまくできていない)
・患者様自身が歯の見た目を気にしている

言い換えると『歯に穴が開いておらず、X線でもう蝕が確認できず、症状もない、本人が気にしていない虫歯』は削る必要がないということになります。

三好歯科 自由が丘女性の副院長が歯の被せ物について患者に説明している

小さな虫歯は治療しない方が良い場合もある

「その虫歯放置して大丈夫?」
「小さいうちに治したほうが良いのでは…?」

という声が聞こえてきそうですが、診断を間違えていない限りは大丈夫です。むしろ、このような虫歯を治療することは、患者様にとって不利益になるほうが多いです。

何故なら、歯の治療とは基本的に抜歯に至るまでの時間を伸ばす延命治療であり、歯の再生でも回復でもないからです。詰め物などの人工物を入れるときは、多かれ少なかれ健康な歯を削るのも、不利益になる理由です。これは、どの歯科医院でも同じです。

虫歯以外を一切触らずに治療できる方法は存在しないのです。

つまり、歯の治療は基本的に取り返しのつかない外科治療であり、虫歯を除去したところには人工物を入れます。すると、以前は存在しなかった『人工物と歯の境目』が生じます。

この『境目』は歯科医師の間で『マージン』と呼ばれ、歯と歯の間の隣接面などと並び、う蝕リスクの高い部位となります。例え自費診療で高い治療精度を保っていたとしても、そもそもマージンが存在しない天然歯には、う蝕リスクの低さでは勝てません。

虫歯の診断には明確な基準がない

話を元に戻します。
削る必要がない歯があるということは、ご理解いただけたかと思います。

さて、ここからが問題です。
先程記載した、削る必要のある虫歯の基準には明白な線引きやルールがありません

X線の診断1つとっても、担当した歯科医師、歯科医院ごとに判断が違うことはよくあります。歯科医師の価値観や医学的考えでも判断は異なってきます。とても小さな虫歯なら見落としてしまうこともあるでしょう。

ですから、前に診てもらった歯科医師と次の歯科医師の考え方が異なると、冒頭に記載した
・他院で3ヶ月に一回健診に通っていたのに、別の歯科医院で「虫歯が複数本ある」と言われた

という現象が起こるのです。

3ヶ月間で虫歯が大量発生する…という可能性は現実的に考えて低いので、恐らく前の歯科医師は「削る必要がない」と判断して様子を見ていたが、次の歯科医師は「削る」と判断したということになりますね。

さて、どちらが正しいのでしょうか?

 

答えは『どちらも正しい』です。

三好歯科 自由が丘歯のホームケア ピンクの歯ブラシに歯磨き粉をつける画像

「虫歯を0にする」以上に大切なこととは

医学の世界は『たられば』な話が多いです。

初期の虫歯が、削らなくても何十年も進行しなければ結果として「正解」となりますが、様子を見ていたら思ったより歯磨きが上手くできておらず、虫歯が大きく進行してしまい「削っておけばよかった」となるかもしれません。

逆に初期の段階で治したけれど、詰め物など人工物の精度が低かったり、歯磨きの仕方が改善しなかったりすると、人工物と歯の間から思ったより早く二次虫歯が発生するかもしれません。

つまり、どちらが正しいという判断を下すことはほぼ不可能です。
もう少し正しい言い方をするならば
ある一時点におけるお口の状態を見るだけでは判断できないし、すべきではないのです。

ましてや健診・メンテナンスで定期的に歯の状態を管理している患者様ならともかく、初診の患者様の全てを指摘できることなどありえない、と私は考えております。

しかし、多くの患者様は初めに
「今、虫歯は何本ありますか?」
「とりあえず今の虫歯を治すのに、どれくらい時間がかかりますか?」
とおっしゃいます。

虫歯を0にすることを重視しすぎているように感じるのです。残念ながら、虫歯を0にしたら歯科医院に通わないつもりでいる方も非常に多いです。

歯科医師がその患者様のニーズに応えるべく、初診で小さな虫歯まで全て判断した結果、「前の歯科医院と全然違うことを言われた」という現象を助長させていると思います。

虫歯を0にすること自体は悪い考えではありません。
しかし、健診に全く行っていない状況が何年も続き、何か起きたor起きていないが数年ぶりに歯科医院へ行って虫歯の数をカウントして、虫歯を0にしたら安心してまた何年も歯科医院へ行かない…

というスタンスは歯科医学的に間違っており、あまり意味がないと考えております。もちろん、数年ぶりの歯科医院で歯に対するモチベーションが変わって、歯の本質を捉えて健診の重要性を理解してくださる方もいらっしゃいます。

まとめ〜歯の健康維持に大切なこと〜

最後に今回の話をまとめます。

1,大きくない虫歯や初期虫歯(穴が開いていない虫歯)は歯科医院や歯科医師ごとに「削る、削らない」の判断基準が違います。そしてどちらの判断も間違いではありません。

2,ある一時点の状態をもって虫歯の数をカウントして、それを治療で0にすること自体はそこまで意味がありません。大切なことは虫歯の原因を探って除去し、その状態を維持することです。

3,虫歯があるないにかかわらず、どんな状況でも健診は非常に大切です。健診なくして歯の健康を維持していくことは困難です。

4、歯の状態や治療に関して何か疑問がある場合は、セカンドオピニオンを受けることをおすすめします。

 

より多く情報や意見を得て後悔のない歯科治療を

この現代、情報は良くも悪くも溢れております。
歯科の治療はそのほとんどが、取り返しのつかない外科治療です。何か疑問があるまま治療に入るのではなく、後悔のないように、より多くの情報や歯科医師の意見を聞くべきだと考えております。

今回は以上になります。
長文をお読みいただき、ありがとうございました。

 

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